お好きな方へどうぞ。

2016年5月1日日曜日

ペリーヌものがたり【カヴァー】









   ♫ 「ペリーヌ物語」について 


ペリーヌ物語は、かつてフジテレビでゴールデンタイムに放送されていた「世界名作劇場」の4作目にあたります。
ただ前番組「あらいぐまラスカル」後番組「赤毛のアン」などに比べると、知名度は今一つでしょうか。正直言って自分も最近まで忘れていました。


ところが5年ほど前に購入した世界名作劇場のオムニバスCDでこのオープニング曲に再会した途端、体中に電流が走ったような衝撃を受けました。

・ワンコーラスの中で、前半 → 跳ねたリズム / 後半 → ストレートなリズム
が切り替わるというラディカルな構成
 (”変わること” より、そこからまた戻ってくるところに違和感を感じさせないところが巧みの技)

・ピアノ・ビブラフォン・アコーディオン・木管楽器などを細かく組み合わせた、華やかで巧みなアレンジ


今更ですが、渡辺岳夫 / 松山祐士のゴールデンコンビによる "凄み" を感じます。
この翌年には「機動戦士ガンダム」を手掛けることになる御両名ですが、自分としては「ペリーヌものがたり」などの路線の方が、このコンビの本道に思えます。

この運命の再会以来、 いつかこの曲を自分の手で演奏したいと思っていました。

  (注)なお、ややこしいですが番組名は「ペリーヌ物語
     その主題歌が「ペリーヌものがたり」です。








 ♫ 円成寺さくらさんについて 


お聴きの通り、その澄んだ声が特徴的な歌い手さんです。

驚いたのですが、さくらさんは歌い始めてまだ1年とのこと…。
しかし、とてもそうとは思えないほど堂々とした歌いっぷりで、自分はかなり助けられました。


…と書いてはいますが、自分もさくらさんのことをよく知っているわけではないのです。

なにせ、僕が youtube でその歌声を聴き → アポをとり → 某所のガストで初対面したのが、今年の3月初旬…。
つまり、まだ知り合って2ヶ月も経っていませんので。



初対面の際、自己紹介もそこそこに iPod でこの曲を聴いていただいたのですが、
平成生まれのさくらさんにとっては「ペリーヌ物語」どころか「世界名作劇場」さえ、よく知らない様子。

しかし即座に『これ、やります!』と答えてくれました。

実はさくらさん、この時期
 ・初のワンマンライブ
 ・CD発売
 ・CD発売記念ライブ
などなど、目の回るようなスケジュールだったのですが、その中でこのセッションにお付き合いいただいて感謝しています。

さくらさん自作曲のCDはこちらで購入できますので、ご興味を持たれた方は是非!
 円成寺さくら1stシングルCD「SAKURA」









 ♫ ピアノアレンジについて 


今回はともかく『その華やかなアレンジをピアノ1台で再現する』ことがテーマです。

弾きながらアレンジしていくと、自分の技量や手癖の枠内で収めようとしてしまうので、アレンジの段階ではあえて手では弾かず、PCへの打ち込みで作り上げました。

当然出来上がったアレンジは自分にとって簡単に弾けるようなものではなく、しかし人を巻き込んでしまった以上、引き下がるわけにもいかず、死に物狂いで練習しました。

結果、演奏としてはまだまだですが、ピアノアレンジには納得がいっています。



なお今回、耳コピ中に気付いたのですが、実際にテレビで流れていたものと、僕が参考にしたCDに収録されている当時のシングルレコード版では、よく似ているもののテイクが違います。

おそらくスケジュール的にタイトなテレビ版の方をレコーディングした後に、レコード用の収録をしたのでしょう。
レコードの方が特にピアノなど洗練されたフレーズになっています。
またテンポ感も若干違います。

今回のセッションは、あくまでレコードのテイクを下敷きにしていることをお断りしておきます。

番組で使われたテイクは、ちょうど第1話が日本アニメーション公式にupされているので、こちらを参考にご覧ください。










2016年3月14日月曜日

【3月の新曲】「Across the Fragile Universe」


どうもミツカワです。

よっぽど沖縄の気候が体に合っていたとみえ、東京に戻った途端リバウンドで伏せっていましたが、しかしここまでが予想の範囲内。 
こうなると分かっていても東京に戻ってきたのは、自分の部屋ならたとえ布団の中でも曲が作れるから!


というわけで、
「ふふふ、全ては計画通り。俺ってやっぱり決まりすぎだぜ!(by 涼村暁)
と一人ブツクサ言いながらシコシコ作っておりました。



けれど、寝たきりで歌は録れないわな…。← 今回の落とし穴



というわけで今回はこの曲!
前回の海の底から、一気に宇宙へと飛んでみました。



形としては歌ものですが、作ってる側の気持ちとしては『歌のあるインストルメンタル』という感じですね。これは前回の曲もそうでした。
自分はこの類の曲を『絵巻物』と呼んでいます。




それとタイトルの件。
元々は歌詞の内容を鑑みて「Across the Fragile Space
としていたのですが、やっぱりなんだか

→ 潔くない ←

と思い(ねえ?)、結局「Across the Fragile Universe」としました。




さて次回の曲は『絵巻物』から離れ、雰囲気をガラリと変えたものとなります。
理由は…

春が来るから!

今年は沖縄で一足先に春を体験してきたので、もう気持ちだけは Spring has come!
また春らしい曲と同時に、別のプロジェクトも進行中!

どうぞお楽しみに。






2016年2月15日月曜日

(帰京報告) 怪奇★楽器が無いと『作詞』が出来ない男


みなさん、お久しぶりです。

僕は毎年、気温と湿度が低下するこの季節になると寝たきりに近い状態になることが多く、今年は思い切って療養のため沖縄に旅立ちました。
もっともこれは昔からのことなので、今年が特別酷いというわけではありません。
むしろ今年は、旅立てるだけの体力が残っていたとも言えます。

沖縄滞在中は Twitter で随分とお騒がせしました。

事情が事情なので、本来は2月中くらいはあちらに留まっていたかったのですが、しかしさんざん迷った末、結局2週間弱で切り上げて帰ってきました。


というのも曲作りが出来ないことによる禁断症状に襲われたからです。


楽器が持ち込めないため、当初から「作曲」は諦めていました。
そこで当初の予定では沖縄滞在中に2曲の歌詞を書くつもりでした。
しかし結果は全くの手付かず…。


理由は『楽器が無いから』でした。


楽器がないと『作曲』が出来ないというのなら、まあ分かりますよね?
しかし今回は世にも珍しい “楽器が無いと『作詞』が出来ない男” の話。







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 ちょっとブレイク。


沖縄の本土復帰 (1972) 〜 沖縄海洋博覧会 (1975) 近辺は、作中に沖縄に絡めた作品が散見され、当時の注目度が伝わってくる。


沖縄の水産大学に通う主人公 “神敬介” が休暇に伴いフェリーで帰京するところから物語が始まる「仮面ライダーX (1974)」






同年の映画「ゴジラ対メカゴジラ (1974)」は沖縄が舞台。
“沖縄の守り神・キングシーサー” なる怪獣が登場する。








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というわけで僕の場合、鍵盤が無いと「作曲」だけでなく「作詞」もままならなくなるのです。

はあ? 作詞なんて紙と鉛筆があれば、どこでも出来るだろう?!

確かに普通はそうだと思います。…思うんですが
(ミツカワの場合)出来ないんだなぁ、これが…orz




そもそも1人で作詞・作曲・編曲を全てやる場合、それぞれの作業を分けて考える必要はありません。
実際、メロディーを作る段階で大まかな編曲は同時にイメージしていますし、非常にラッキーなときにはメロディーと歌詞が同時に生まれてくることもあります。

ただしこれは本当にラッキーな場合。通常はまずありません!

というわけで、ほとんどの場合はメロディー(とコード進行)が完成後、ようやく歌詞に取り掛かることになります。

これに関しては、まずは真白い紙を前にして、ただ延々ウーンと唸り続けるだけです。

そうやって七転八倒しているうちにワンフレーズずつですが、自分のイメージとピタリとハマる言葉が出てきます。
しかしこの時点では、まだ朧げな『断片』であって『流れ』は生まれてきません。



ここで僕の場合、鍵盤が必要になるんです。
どういうことか?






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とりあえず曲頭から、決定した箇所のフレーズだけ言葉で、未決定のところはラララ〜で歌い、擬似的に弾き語りをするんですね。

これをとにかく延々と繰り返しているうちに、ある瞬間、決定した箇所のフレーズに続いて スルッと続きの歌詞が生まれてくる んですよ。

例えばこの曲のBメロ(♫〜 空模様、気にしてる君を連れ出そう〜)は、まさにそうやって生まれてきました。





つまり僕の場合、紙に向かって唸っているだけでは、どんどん狭い世界に凝り固まって袋小路に入ってしまう。
それを弾き語りにすることによって、頭の4分の1位は指先に持っていかれますよね?弾かないといけないから。

それによって、集中しすぎて身動きのとれなくなっていた脳みそが解放されるというか、勢いがつくような気がするんです。



となるとやっぱり僕の場合は『さあ、作詞するぞ』と鍵盤の前に座らないと何も始まらないんですよ。
まあ特殊なケースだと思うんですが、こーゆー奴もいるということで。






 今回の結論 
→ 楽器のない沖縄では何も出来ませんでした…orz


…これから頑張るよ!
東京に帰ってきた途端、また寝込んでしまったけど頑張るよ!!


んじゃ、To be continued.

2016.02 那覇市内にて








2016年1月14日木曜日

2016年 ライブの足袋…いや、旅。

ミツカワです。
新年早々、悩んでおります。

とはいっても、その悩みは今に始まったことではなく、大袈裟に言えば僕が初めて曲を作った時から続いている悩みなのです。



それは端的に言って
「自分が作りたい音は(結果的に)ライブ演奏向きではない」
ということに尽きます。

ピンとこないかもしれません。
現在のテクノロジーなら再現出来ない音なんて無いだろう?、と。
はい。技術的には問題ありません。

問題はミツカワの嗜好性というか アレな性格にある んですよ。





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少し回り道ですが、最新曲の「深海 〜 夜毎、降りてくる君へ 〜」の話から。
この曲、最後の方にギターソロを入れてあります。(4:04〜4:31)

このようなソロを録る際、僕はまず大まかな起承転結を考えます。
最初は高音から入って、そこから8小節は大きくリズムをとる感じのフレーズ、なんて感じです。
で何度か実際に弾いてみて、本番となるわけです…


が、しかし!


何故かいつも本番の録音ボタンを押した途端、全然違うフレーズを弾き始めちゃうんですよ。

今回も、ゆったりとした大きなラインを描く感じで雰囲気重視のソロを…と思って録音ボタンを押した途端、全然違う ハードロッカーのスイッチ が入ってしまい、この有り様さあ!!





というわけで、今のところ曲にはほとんど現われてませんが(今後もまず、ありませんが)ミツカワの奥底にはロケンローなパッションがシェケナベービーな訳なんですな。





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さて今年。アルバム制作と同時に、どういう形式になるかわかりませんがライブをやろうと考えています。

しかしここで『自分が出したい音』と『頭に浮かぶライブのイメージ』が 根本的な部分でズレてしまっている んですよ…。



   ロケンローなミツカワのイメージするライブのスタイルとは? 

 ・あまり人数が多いバンドは好きじゃない。多くても6人が限度。
   理由 → ロックじゃないから。
 ・ブラスやストリングスの音は大好きだが、
  ライブで生のブラス隊やストリングスがいるのは好きじゃない。
   理由 → ロックじゃないから。
 ・打ち込みの音は大好きだが、それが垂れ流しなのは好きじゃない。
   理由 → ロックじゃないから。

ここに理屈なんてありません。あるのはただロケンロー です。



と、この3点を頭に入れた上で、ここ最近の曲を聴いていただくと、つまるところ
→ どないせいっちゅうねん!!←


特にこんなのやりようが無さ過ぎて、むしろ清々しいわ…↓






とはいえ、今の段階でライブを見越した音作りをするのも本末転倒。

とりあえずしばらくは頭に浮かんだ音を、そのまま形にすることを優先しますが、いつか(しかもそう遠くない、いつか)必ず壁にぶち当たるわけで、なんとも悩ましい限りです。


まぁいざとなったら、開き直って
 ・ステージ上に30人ぐらいいて
 ・もちろんブラス隊もストリングス隊もいて
 ・でも聴こえてくるのは打ち込みの音ばかり
みたいなことするかもしれませんが…。

これがロックだよな!とか言いながら…。





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というわけで現在、悩みつつも次の新曲demoを製作中です。
久しぶりに勢いのある曲で作っていて、とても楽しいのです …が、

また、バンド演奏には向かないものになりそうです…。



んじゃ、また。






2016年1月1日金曜日

【1月の新曲】「深海 〜 夜毎、降りてくる君へ 〜」

ミツカワです。

えーと、大晦日とか正月とか関係ありません。
12月の 新曲です!!

…と思って、曲のアップロードを始めたのが12月31日午後10時過ぎ。
いつもなら余裕で間に合う時間。


だが!しかし!!



大晦日の回線渋滞 を甘く見てたよ、あたしゃ…。

11時過ぎたあたりから、異常に回線スピードが落ちて残り時間がドンドン増えていっているという始末。(注)
もう確実に12月中には間に合わなくなってしまったミツカワの考えた策とは?!


  
  
  


皆様、明けましておめでとうございます。
ミツカワです。

えーと、大晦日とか正月とか関係ありません。
1月の 新曲です!!




なんだろう…なんか吹っ切れたようなような気がする、俺…。

 (注)結局アップロードが完了したのは、1月1日午前3時前!
    アップロードに5時間って、江戸時代かよ!!






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さてこの季節、何人かの方から「クリスマスソングは作らないんですか?」と聞かれました。
こちらにそのつもりは全くありませんが、

いいんですよ。この曲をクリスマスソングと(思えるもんなら)思っていただいても。

実際、24〜25日は一日中1人篭ってこの曲を作っていましたから。
メリークリスマス!!(ヤケクソ)








展開の極端な曲です。
作っている分にはとても楽しいのですが、ライブでどう再現するのかと考えると思考停止になってしまうのが困ったところ。


この曲は、女性が低い音域で歌った時の硬質な声をイメージして作りました。
なので女性が普通に歌って
「もうちょっと上の方にメロディーがいったら、歌っていて気持ちいいのに」
という音域に、あえて行かないようにしています。

今回はVOCALOIDに歌わせているので、カラっとした声質になっていますが、本番で人に歌ってもらうときは、もう少し湿気の多い感じに歌ってもらうつもりです。




次回は、この曲についてのあれこれを。






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2015年は自分にとって、大きな節目の年となりました。
2016年はさらに大きな勝負の年となります。

獅子舞のように 縁起物を観るような目で、ミツカワの七転八倒ぶりも生暖かく見守っていただければと思います。


では皆様、良いお年を!!
(これ書いてた時は、まだ2015年だったのよ…トホホ)





2015年12月21日月曜日

[特撮-12] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その5

おかしい…。何かがおかしい…。狂っている…。



あ、ミツカワです。

見ての通り今回も『ジェットマン・エントリー』なんですけどね。
当初の予定では、これ 3回で終わって、とっとと次の作品に移る 予定だったんですよ。(大汗)



で、さらに今回ですね…。



元々は最終章の恋愛関連部分をかいつまんで紹介し、それぞれの意味の違いを見ていくつもりだったんですが…。
しかし、実際に執筆し始めると "かいつまんで" なんて不可能 なほど、頭からお尻までぎっちりストーリーと絡まっているんですよ(涙)

というわけで、一旦書きあがったものを 全部ボツ として、とりあえず今回と次回は実質、第49話・第50話それぞれのプレビューとなります。
詳しくは次々回に見ていきますので、とりあえずは話の流れを掴んでおいてくださいね。

一応、今の所の目標は『〜その10』までに終わらすこと、であります…。



なお、今年の元旦に立てた目標は「鳥人戦隊ジェットマン」だったはずなのに、この時期になっても、まだ全然手がついていないとお嘆きの方は、ぜひこちらのあらすじ等からお読みください。








 第49話「マリア…その愛と死」

前話のラストで、ラディゲの策略で理性を失って人を襲う魔獣となっていくマリアを救おうとした竜。
だが逆にミイラ取りがミイラになってしまい、自分も理性を失い人間の血を求める魔獣とされてしまう。


基地に戻った竜はロボの整備中に香を襲いかかり、取り押さえられた挙句、檻の中へ。
血を求め禁断症状のように、のたうつ竜。
本人がその欲望に打ち勝たない限り打つ手がなく、立ち尽くすメンバー。
よりにもよってそんな時、モニターには街で無差別に人を襲うマリアの姿が…。





ここで凱が決断を下す。香の腕をつかみ
「竜を…頼むぞ」
大きく頷く香。


2人を残し、凱・雷太・アコはマリアの元へ走る。




1人残された香は、暴れのたうち回る竜をじっと直視し続ける。


突然、意を決したように檻の電子ロックを開錠、中へ入る香。
襲いかかる竜だったが欲望を乗り越えるよう、必死に語りかける香の叫びにようやく正気を取り戻す。



その頃、 凱たちは…。






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その正体を知っている3人は、暴れまわるマリアに手がつけられない。
そこに駆けつけた竜と香。
竜の捨て身の接吻により、ついにマリアはリエとしての意識を取り戻す。


何が起こったのか分からず、呆然と竜を見つめるリエ。
万感の想いで彼女を抱き寄せようとする竜。







しかし、そこへ現れたラディゲの襲撃によって2人は引き裂かれてしまう。

「マリア、お前は俺のもの。バイラムの幹部として生きるのだ」
「あ、あなたは…!!」


その姿、その言葉で、リエに全ての記憶が甦った。




「リエ!」
リエ「寄るなっ!!」

次の瞬間、リエは竜を拒絶。
立ち上がり、自らラディゲのそばによる。


リエ「竜、確かに昔、私はお前と愛し合った。
   だが今はバイラムの幹部…これからもずっと!!
リエでありながらも、その口調はマリアである。
「何言ってるんだよ、リエ?!」うろたえる竜。立ち尽くす4人。


「よく言ったマリア」勝ち誇るラディゲ







                 次の瞬間









ラディゲの油断を誘い、背後から一突きするリエ。
「せめて、せめて一太刀、お前に浴びせたかったっ! ラディゲっ!!」





「せめて」という部分が哀しい。
リエは初めから "自分の力ではラディゲを倒すことなどできない" ということが分かっているのだ。
それでも自分の人生をめちゃくちゃにした男に傷のひとつでも付けなければ、死んでも死にきれない。それに尽きるだろう。

直後、当然のごとく激怒したラディゲに切って落とされるリエ。
彼女にとっては、これも覚悟の上だ。


「マリア、お前は俺のもの。レッドホークには渡さん
傷を負いながらも最低限の目的は達し、高笑いしながら去っていくラディゲ。






駆け寄ろうとする竜だが…。
「竜、来ないで!!」刃先を竜に向けるリエ。


「これで…これでよかったのよ、竜。私の手は血で汚れてしまった
「昔には戻れない。あなたの腕に抱かれる資格は私には無い」

グレイの言った通り(前回参照)マリア=リエには確かに人間としての心が残っていた。
しかしだからこそ、いくら操られていたとはいえ、自分自身の行ってきた行為から眼を背けることなど、彼女には出来なかったのだ。




取り乱し、リエに駆け寄ろうとする竜。
そこへ彼女の気持ちを察したグレイが現れ、立ちふさがる。


「もう助からない。最後のお願いよ、竜…。忘れて…私のことを…」
「…やめろ…」
「あなたの胸から私の記憶を拭い去って…」
「やめろーー!!」

無我夢中で駆け寄る竜の目の前で2人の姿は消える。


           「リエーーーー!!」

結局、竜は "リエをバイラムから取り戻す" どころか、その亡骸を抱くことすらできなかった。





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離れた海辺でリエを抱きかかえるグレイ。
(波による光の乱反射と、首筋の返り血のコントラストが美しい)



リエ「ありがとう…グレイ」

自分の気持ちを汲んでくれたグレイに感謝するリエ。
リエに戻ってもグレイに対する信頼は変わらない。

グレイ「これでよかったのか?マリア」
リエ「本当は死にたくない…もう一度…もう一度…一から竜とやり直したい
  「…竜……りゅう………りゅぅ…

意識の薄れてゆくリエは、ただ竜の名前を呼び続ける。
自分の胸に抱かれながらも別の男の名を呼び続ける彼女を、ただ見つめるグレイ。
そしてリエは静かに息絶える。







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あまりのことに崩れ落ち、1人いつまでも泣き続ける竜。
一連の流れを背後から、ただぼう然と見つめる凱・香・雷太・アコ。


「見るんじゃねえ…そっとしておいてやれ」
竜を残し、去る4人。








絶叫する竜の脳裏に蘇る、在りし日のリエ。











               その姿が消え…。












            次回、第50話「それぞれの死闘」






2015年12月12日土曜日

[特撮-11] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その4


こちらのエントリーは連載となっています。
「鳥人戦隊ジェットマン」も分からないようでは、昇進に響くのではないか?と不安な方は、是非こちらのあらすじなどからお読みください。

 [特撮-08] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その1
 [特撮-09] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その2
 [特撮-10] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その3

なお稀に、読んだことで 余計に昇進に響く 場合もございます。
ご了承ください。





さて、今回からいよいよ本題の『鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか?』という部分に切り込んでいく。
これについては以前『結論から先に言うと、恋愛ドラマではなかったし、恋愛ドラマだった』と書いた。


というのは、このドラマでは 3つの恋愛模様が交錯している からなのだ。

1)凱 → 香 → 竜

これがメディアなどで取り上げられる『戦隊内部での恋愛』だ。
しかし「鳥人戦隊ジェットマン」では他に2つの流れがある。

2)竜 → ← リエ
3)バイラム側 / グレイ → マリア ← ラディゲ

この3つが並行して、またある時は 多重的に絡み合い、ドラマを紡いでゆくわけだ。








 マリア ← ラディゲ 



話がややこしくなるので先に一件、例外 を除去しておく。
3)において『マリア ← ラディゲ』と書いたが、実際にはこれは “執着” であって恋愛感情では無い。
ラディゲによる 一方的な所有欲・独占欲 である。



この番組のもう1人の主役と言っていいほどドラマに深く関わり、また時にはその中心に座ることすらあるラディゲであるが、その 鬼畜&ゲスっぷり は数多くのスーパー戦隊の敵の中でもひときわ輝く。
彼の前では「侍戦隊シンケンジャー (2009)」の敵「外道衆」の方々が紳士に見えるほどだ。



あえてここに組み込んだのは、この『マリア ← ラディゲ』という点に彼の屈折したキャラクターがよく表れていると思ったからだ。

まずそもそも論として、宇宙空間に放り出され死にそうになっていたリエを回収し洗脳して "バイラム幹部・マリアに仕立て上げたのはラディゲ である。
そういう意味では創造主なわけだ。

しかしマリア本人はそのことを知らず、普段はラディゲを嘲るような態度を面と向かってとっている。



 (自分の作戦を自画自賛するマリアに対し)
 ラディゲ「(嘲笑)」
 マリア「何が可笑しい!」
 ラディゲ「マリア、たとえお前が何をしようと、この私を超える事はできんのだ」
 マリア「黙れ!!そのうぬぼれがいつまで続くか見ているがいい」
 (第14話)


このラディゲの言葉の本当の意味をマリアは知らない。
つまりラディゲは自分の生み出したものが、自分の手のひらで踊らされているに過ぎないものが、それを知らず自分を蔑む様を見て、1人ほくそ笑んでいるのだ。




ド変態である。



もう一度言う。ド変態である。




それと同時にラディゲが固執しているのはあくまでマリアであってリエではない、というところもポイントである。
つまりラディゲが執着しているのは "所有物としてのマリア” なわけだ。

このラディゲのマリアへのちょっと理解しがたい執着は、物語の最終局面に大きく関わってくる。








 1)凱 → 香 → 竜 



さてド変態の世界にはさっさと別れを告げ、ノーマルな恋愛の世界を見ていこう。
まずは ジェットマン内部での恋愛模様。

この項と次の項に関しては既に何度か触れてきたので、その顛末に絞ってサラッと流す。



結成時のアクシデントにより民間人の寄せ集めになってしまったジェットマン。
その中にあって香は竜に惚れ込む。そしてそんな香に凱が惚れ込む

一方、竜は恋人リエを失うと同時に敵バイラムの襲撃に対し、唯一のプロとして先頭に立って立ち向かわなくてはならず、とても香と向き合うような余裕は無い。
しかしその、香と正面から向き合おうとしない竜の態度余計に凱をいらだたせ、その行動に雷太やアコまで巻き込まれ、とてもチームワークなど望むべくもない。



しかし第30話において 転機 が訪れる。

何度アタックをかけても取り付く島もない竜に対して、身を呈して(分かりやすい形で)自分を助けてくれる凱。
ついに 香は凱の気持ちに応え、2人は付き合うようになる。



(ここで一件落着といけばいいのだが、実際はジェットマンとしての活動がおろそかになるなど新たな火種に…)




ここから1クール程は良い雰囲気が続くのだが、だが所詮、御令嬢育ちの香とアウトローの凱では住む世界が違いすぎ、次第にギクシャクしはじめる。


ギクシャクしはじめた時期、基地に飛び込んできた凱と思わず目があった香の間に流れる微妙な空気はなかなか(嫌な意味で)リアルである。





 アコ「まあ、なんだね。あたしとしてはダメになると思ってたよ。だってさ凱と香じゃ育ちが違いすぎるもん。…竜の方が合ってたんじゃなあい?」
 香「ええ?そんなぁ…」
 (第44話)



結局これは、香の両親との会食の席において決定的 となる。



そして第45話。
アコ、雷太と共に敵に捕らえられ、凱と竜によって助け出された香。
その戦闘の終わった後の二人の会話。

 香 「凱、ごめんね。心配かけて」
 凱 「ああ、心配したさ。俺たちは仲間だ」

ここに 2人の関係はリセットされる こととなる。
そして同時に番組開始から続いた、香を中心とした戦隊内部の恋愛模様も、ここに ひとまずの終結を見る。


さて凱と香2人が一悶着起こしている その頃、竜は…。








 2)竜 → ← リエ 



前回触れたように敵・マリアの正体が恋人リエである事に気づいてしまい、ガタガタに崩れていく竜のメンタル。

リエは一旦正気を取り戻しても、再びラディゲによってマリアに戻されてしまう。
自分が何者なのか。自分に何が起こっているのか。全く分かっていない。
なので一旦マリアに戻ってしまえば、再び躊躇なくジェットマンに、竜に襲いかかってくる。

しかし竜の方はそうはいかない。
もはやマリアと戦うわけにはいかず、必死に呼びかけるその声は届かず、哀れな竜…。


完全に女王様状態のマリア



ここから竜の
リエをバイラムから取り戻すんだ → 無理でした → リエをバイラムから〜 → 無理でした
という 悲しい一人相撲 が続く。

結局は "リエの事は一旦置いておいて、とりあえずはバイラムを倒すことに集中しよう" という所に気持ちを落ち着けるのだが…。






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​さて、これまで軽くスルーしてきたが、本来かなり重要なのが敵・『次元戦団バイラム』である。
バイラム側のドラマ抜きでは「鳥人戦隊ジェットマン」は傑作たりえなかった。

特に中盤以降、それぞれがこう着状態に陥り停滞するジェットマン側に対し、ドラマティックな展開で、ストーリーを引っ張り始めるのはバイラム側である。

しかしメディアなどで取り上げられる際、残念ながらこぼれ落ちてしまうのもここである。



バイラム側の見所は数多くあるのだが、今回は恋愛に絞ったエントリーなので、『グレイ → マリア』を焦点を絞る。

上記2つが、分かり易い恋愛劇の形をとっているのに対し、グレイのマリアに対する感情は複雑だ。「鳥人戦隊ジェットマン」を恋愛ドラマとして見た場合、深みを与えているのがここの部分である。








 3)バイラム側 / グレイ → マリア 



バイラム幹部の1人、グレイ を紹介する。



以前、紹介したようにグレイはロボットである。

誰が、なんの目的で作ったのかなど、その由来は一切語られず、またグレイ自身がそれを知っているのかも触れられることはない。
ただ他の登場キャラクターのような『生き物』でない以上、彼の誕生には何らかの意思が介在していたはずであり、またその構造からして戦闘を目的としたロボットと思われる。

だとすれば、これまた以前述べたように番組開始時点で『組織としてのバイラム』はすでに終焉を迎えているので、全登場キャラクター中、唯一役目を終えた、レゾンデートルを失った存在であり『虚無』ともいえるだろう。



そのせいかバイラム幹部4人のうち、地球侵攻に対し一番冷めた態度で臨んでいる。

自分の立てた作戦がジェットマンに阻まれても「所詮、遊び」とうそぶき、それほど悔しがる様子も見せない。
番組序盤のグレイはクールというより冷めきった、まさにロボットである。
また基本的にいがみ合いのバイラムの中において、グレイだけは争いとは距離を置いている。




グレイの興味はロボットにもかかわらず 酒、タバコ、そして音楽。
こう書けば分かるように、彼は 凱と対を成すキャラクター である。

(凱もジェットマン5人の中で一人だけその出自や、親兄弟含め過去に因縁のあった人物が一切登場せず、過去が明かされない。
 なお、凱がジャズを好むのに対してグレイはクラシックを好む)

グレイと凱は次第に相手を意識し、ライバル関係になっていく。



それぞれの命運を賭けルーレットで勝負する、いかにも2人らしいエピソード。
第39話「廻せ命のルーレット」





だが第13話にて、マリアが演奏するピアノ曲を聴いた時から、グレイは別の顔を見せるようになる。


突然、吸い寄せられるようにピアノの前に座り演奏を始めるマリア。
この時、グレイだけでなくトラン、ラディゲまでもが無言でその様子を見つめるのが印象的だ。


しかしマリアは演奏を中断。
自分のとった行動、そしてなぜピアノを演奏できるのかわけが分からず困惑する。


この時マリアが弾いた、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情」は、その後も『グレイ&マリア』のシーンで使われるようになる。





この時点ではグレイが興味を示したのがマリアなのか、あるいはマリアのピアノ演奏になのかは分からない。

しかしここを起点としてグレイには、ジェットマンとの戦闘中マリアに力を貸す、さらには身を呈して守るような行動が目立ち始める。
その積み重ねから、マリアの方も "グレイは特別" という意識が芽生えていく。

この気持ち(?)の流れは1年を通しとても丁寧に描かれていて、視聴者も敵ながら感情移入してしまうだろう。

お互いをかばい合うグレイとマリア




だが、しかし。
この感情のやりとりは先に書いたような、他のキャラクターたちによる恋愛模様とは 決定的に違う。


グレイは自分がロボットであり『ロボットである自分にはマリアが本当に望むものを与えてやることは出来ない』ということを何度も思い知ることになるからだ。

先程書いた「マリアの方もグレイは特別という意識が芽生えていく」というのも、決してそれ以上ではない。
マリアから見れば、この感情は恋愛ではなく信頼関係なのだろう。


つまり、どう足掻こうが、グレイ → マリア という矢印に変化は訪れないのだ。
その全てを受け入れ、しかしそれでもグレイはマリアを見つめ続ける。




この『グレイ → マリア』は地味ながら非常に見応えがあり、また別のエントリーで触れる予定だ。
今回はあくまで番組全体の恋愛事情の1つとして、その顛末を見ていくことにする。




最終盤、マリアは功を焦るあまりラディゲにつけ込まれ、その操り人形となってしまう。
理性が薄れ、手当たり次第に人間を襲う魔獣となっていくマリア。
もはや自分の声はマリアに届かないと悟ったグレイは、敵であるはずの凱達の前に姿を現す。


そして…




 凱「グレイ!」
 グレイ「………マリアを…頼む」
 凱「何?!」
 グレイ「マリアはお前たちと同じ人間。傷つけてはならぬ」
 凱「何言ってやがるんだ。今のマリアは人間じゃねえ!」
 グレイ「私にはわかる。マリアには人間としての心が残っている。
     人間に戻れる可能性がある」
 凱「…グレイ、なぜだ。なぜ貴様がそんなことを…」
 グレイ「マリアを魔獣にしたくない。それならば人間に戻してやりたい」
 アコ・雷太「…」
 凱「覚えておくぜ…お前の言葉…」
 (第49話)




この “一歩" は果てしなく大きい一歩だ。

なぜなら、マリアが人間に戻るということは自分の手元から去ってしまうということだからだ。

竜が愛しているのはリエである。マリアでは無い。
同じくラディゲが執着しているのはマリアである。リエでは無い。
グレイだけがその境界線を超え、彼女の存在、その全てをありのままに愛する境地に至ったのだ。

しかしその想いをマリア(リエ)が知る事は無い。
果たして彼女を中心としたドラマの行く先は…。






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この番組における恋愛要素が多重構造になっているのがお分かりいただけただろうか。

次回はマリア=リエ編の最終章とも言える・第49話「マリア…その愛と死」


そして一見宙ぶらりんになってしまったかに見える香達のドラマの帰結点・第50話「それぞれの死闘」を通して、この番組におけるそれぞれの恋愛要素の意味の違いを見ていく。


んじゃ、また。