お好きな方へどうぞ。

2015年8月20日木曜日

[特撮-04] 大切なウソ

前回ラストで、次回は「制作陣のこだわりの、とある怪人を紹介する」と予告したものの、その後、放送当時(1987年)に自分の感じていたことをいろいろと思い出したので、一回追加することにしました。



さて前回、「仮面ライダーBLACK」のことを『設定やストーリーなど、非常に力が入った作品』と書いたが、怪人造形のリアルさもこの番組のウリのひとつであった。

造形を担当したレインボー造形企画は放送開始前のインタビューで『この番組のために渡米し、最新の技術を仕入れてきた』『体毛の一本一本まで手で植毛してある』と大見得を切っていた。

大見得を切るだけあって、放送開始前に公開された初期話数の登場怪人はどれも、今までとは次元の違う生物感に溢れ、番組への期待をより一層大きくさせた。




かなりグロい、クモ怪人(第1話)ヒョウ怪人(第2話)






そしてひとつの到達点。ノミ怪人(第4話)
確かに体毛の一本一本が伺える。(3枚目の背中を参照)
これをたった1話で倒してしまうのだ!!









しかし、これには2つの落とし穴があった。


劇中の演出も相まって、「気持ち悪い」「子供が怖がる」などのクレームが届くようになったのだ。
確かに日曜朝10時といえば遅めの朝食をとっている家庭もあるだろうから、そこでブラウン管に映るものとしては、いささかやり過ぎた感はある。(もちろんこれはプロデュース側のミスであり、レインボー造形企画に非はない)

結果、放送開始後に製作する着ぐるみに関しては自重することになったそうだ。





もうひとつの問題は私感ではあるのだが、前回触れたように「リアルにすれば良いというものでもない」ということだ。


クモ怪人の様に、元の形(蜘蛛)が人間とかけ離れたものは、デザインの段階でアレンジせざるを得ない。
ただ人が中に入れるだけなく、それを着たうえで激しいアクション(例えばトランポリンを使ったバク宙など)が出来る様にアレンジしなければならないのだ。

この場合は造形がリアルであればあるほど怪人の実在感は高まる。




しかし、例えばトカゲ怪人(第10話)の様に、元の形が人間と似通っている場合、ゴルゴム怪人はほとんどデザインアレンジされていない。

これに先のレインボー造形企画、屈指の造形力が加わるとどうなるか?
元の生き物、そのままにしか見えないのだ。

例に挙げたトカゲ怪人の場合、四つん這いになってライダーの腕に噛み付き、引きづり廻すシーンがあるのだが、それはもう人の大きさをした、ただのトカゲにしか見えなかった。



トカゲ怪人というより、ただのでっかいトカゲ…。





さらにゴルゴム怪人の特徴として、人語を発することがかなり少ない(全く喋らなかった奴も多い)ため、知性を感じさせず、さらに「ただのおっきな生き物(これはこれで脅威だが)」感を加速させた。
こうなるとライダーとの戦闘シーンは一歩間違えば、画づらとして動物虐待にしか見えなくなってしまう。




やはり創作においてウソ(ディフォルメ)は大切だなあと再認識させてくれた一年であった。




なお動物虐待といえば「仮面ライダーアマゾン」(1974)のライダーVS獣人も似たようなものじゃないかという意見もあるかもしれない。しかしあちらはアマゾン自体がケダモノ同然(むしろ獣人の方が知性を感じさせる)なので、そうは見えない。
ポコ太は「仮面ライダーアマゾン」のことを「闘う野生の王国」と名付けている。


カニを捌くアマゾン。アマゾンの無茶苦茶な戦い方を見ていると、獣人が気の毒になってくる。






さて、造形に関して番組開始後は自重されるようになったと書いたが、中にはとてもそうとは思えない奴もいた。特に昆虫系は一貫して高いクオリティを保っていた。
最後に番組中盤~終盤に登場した、ポコ太歓喜のムシ達をご紹介する。


タマムシ怪人(第21話)
国宝級の美しさ!特に頭部のアップになるとタマムシそのものです。




クワガタ怪人(第43話)
この大アゴのうねり!繊細な指先!










というわけで次回はいよいよ仮面ライダーBLACK編のラスト。
制作陣(意味不明の)こだわりの逸品。◯◯怪人を紹介する!刮目して待たれよ!!