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2015年12月5日土曜日

機材紹介 /​「M-GS64」〜 緊急指令・予防線を(自己責任で)突破せよ!


さて今回は前回掲載したdemo曲「慟哭」にて、大活躍した機材を紹介する…


…んですが、最初にお断りしておきます。
この機種、別に名器でもなんでもありません!
いや、名器どころかむしろ…。

というわけで『お、コレこないだミツカワが言ってたやつじゃん!クソ安いし、いっちょ買ってみるか』なんて事をされても当方は一切責任持てませんので自己責任でお願いいたします。


まあつまり、こうやって 予防線を張りまくる程度の機材 ってことですよ。



今曲、前曲と "スケッチしておいた曲" という言葉が出てきましたが、自分の場合『スケッチ』とはデモですらなく、とりあえず自分が分かればいいというものです。
そのためクリックもテンポも一切設定せず、シーケンサーをいわばテープレコーダー扱いでピアノなりシンセの音でコードとメロディーを入れておきます。
(ただしパーツ集ではなく、最低限1コーラスは曲として完成しているものです)

後はその上に重ね録りで、その時頭の中で同時に鳴っている音を一緒に入れておきます。
あくまで自分が後から聴いて "どんな景色をイメージして作った曲なのか" が分かればいいという程度です。






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というわけで今回の主役の登場です。

とにかく “スケッチ” なんで時間をかけずにバーっと記録してしまいたい、ということで90年代中頃から割と最近まで、ほとんどこれ1台+αでスケッチしていました。

それが Roland「M-GS64」という1Uラックの音源モジュール です。






もう一度強調しておきますが、名器でもなんでもないですからね!(2本目の予防線)
今、この名前を聞いてピンとこなかった人 + あー、そういえばそんなのあったような気がするなぁと思った人 = 世間の95%だと思います。

お値段も発売当時で6万5千円(税別)
まあ、はっきり言って アマチュアが最初に買う機材 といったレベルです。



ただ今となっては伝わりにくいでしょうが、当時この値段で
『最大同時発音数64­ 音色数654­ ドラムセット24­ パート数32』
というのは、ものすごくコストパフォーマンスに長けていました。
そのうえ、ステレオアウトも 無駄に2系統装備 していたりして、いったいどのレベルのユーザー層を狙っているのかよく分からない機材でもありました。


wikipedia ではこう紹介されてます。

「M-GS64」 
 SC-88相当の1Uラック版。SC-88より音が良いとされ流通量が極めて少ないため中古市場でもあまり見かけることはない。

ここにも書かれている通り、当時一世を風靡していた Sound Canvas シリーズ「SC-88」の1Uラックバーションなんて紹介もされましたが、「M-GS64」は電源を内蔵しており、音質も自分の印象では「SC-88」より落ち着いた感じでした。

なお下線部分を読むと名器っぽくも思えますが…騙されるな!
これは単に大して売れなかっただけだと思われます。






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ただ、写真を見ると貧弱なインターフェイスに見えますが、自分でシステム・エクスクルーシブ・メッセージを作成して送信すれば、ありとあらゆるパラメーターを操ることが出来(注)自由度は非常に高い です。

 (注)例えばドラムキットの中で、スネアだけピッチを変える・ポルタメントタイムを変更するなど。

なお、この "システム・エクスクルーシブ・メッセージ" の作成には16進数による計算が必要で、ミツカワは90年代後半こればっかりやっていたせいで、通常の10進数の計算が苦手になってしまいました。本気で生活に支障をきたすレベルです。 ←



  これがシステム・エクスクルーシブ・メッセージだ!


コントロールしたいパラメーターごとに赤線部分のようなデータを1行ずつ作って送信する。
ミツカワの青春はシステム・エクスクルーシブ・メッセージと共にあった と言っていいだろう。それが青春ってどうなんだ?とかは考えない。





閑話休題





というわけで自分が "スケッチ集" と称しているデモテープ群を再生すると、ほぼ全てこの「M-GS64」+「JV-2080」(こちらは名器です)で書いた音が流れてきます。

ここから本題なんですけど、15年ほど前にPCに制作環境を移行させようと思ってかなりの機材(JD-800 とかね)を売り払ったんですが「JV-2080」はともかく、この「M-GS64」もいまだに手放せないんですよ。

その理由を 今回の「慟哭」を作っていて思い出したんです。






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三たび強調しときますけど名器でもなんでもないので、はっきり言って 音はしょぼいです。(3本目の予防線)
音色だけでなくリバーブもなんかザラついた感じがするし、インサーション・エフェクトなんてシャレオツなモノも付いてないので、ディストーションギターの音などは聴けたもんじゃないです。



なんですけれども、この独特のくすんだ感じがたまたまこの「慟哭」という曲にマッチしてるような気がし、今回の発表にあたって一旦は良さげなソフトシンセに差し替えたりしたんですが、結局は「M-GS64」の音&リバーブをそのまま使いました。


ですので、この音源で聴ける音の50%以上は「M-GS64」のままです。


ショボい音でも曲の持っている世界観とマッチしてしまったら、どんな高級機材と差し替えても違っちゃうんですよね。

とはいえアウトプットなんかも、やはり それなりのものでしかない ので小さい音だとノイズが聴こえてきますし、リバーブを深くかけるとリバーブの消え際にノイズが聴こえたりとかしてしまうので、来年本格的にレコーディングし直すときにはどうしたもんか…というのが悩み所であります。





さてここまでは音質の話でしたが、もう一つマッチングしてしまったものがあります。
それは 演算能力の足りなさ です。

といっても『は?』という感じでしょうが、それはこういうことです。





中盤に入ってくるシンセソロ。
この最後でポルタメントをかけて音を急激に上昇下降させています(3:07〜08)



これは当然そのようなデータをシーケンサーから送って「M-GS64」を鳴らしているわけですが、よく聴くと「M-GS64」が非力な為 このデータに追従しきれず、曲線が階段状になってしまっているのです。


図で書くとこんな感じ。


本来これは良くないことなんですけれども、この曲に限って言えば、なんだか 「M-GS64」 が悲鳴をあげているように聴こえる んですよ。
それが曲の雰囲気と凄くマッチしてる感じがして、これまたいろんなシンセに差し替えたんですが、結局「M-GS64」に勝るものがなく、そのまま採用したというわけです。
ある意味、テクノでしょ。






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というわけで購入以来20年近く現役であり続けた「M-GS64」ですが、ついに、ついにそのライバルが!
この冬、早ければ年内にも Roland から同種の波形を搭載したソフトシンセ「SOUND Canvas VA」を発売 とのアナウンス!




まあ「M-GS64」の音質は、アウトプット端子などのアナログパーツによるところも大きいでしょうから、完全な代わりにはならないと思いますが、それでも全音色が配列も含め自分の頭に入っているというのは大きいです。
スケッチ用途としては最適かも、と期待に胸を膨らませています!





さて次回は、いよいよその恋愛事情の実態に迫る!
ジェットマン・エントリーも本番です!!

んじゃ、また。