お好きな方へどうぞ。

2015年12月21日月曜日

[特撮-12] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その5

おかしい…。何かがおかしい…。狂っている…。



あ、ミツカワです。

見ての通り今回も『ジェットマン・エントリー』なんですけどね。
当初の予定では、これ 3回で終わって、とっとと次の作品に移る 予定だったんですよ。(大汗)



で、さらに今回ですね…。



元々は最終章の恋愛関連部分をかいつまんで紹介し、それぞれの意味の違いを見ていくつもりだったんですが…。
しかし、実際に執筆し始めると "かいつまんで" なんて不可能 なほど、頭からお尻までぎっちりストーリーと絡まっているんですよ(涙)

というわけで、一旦書きあがったものを 全部ボツ として、とりあえず今回と次回は実質、第49話・第50話それぞれのプレビューとなります。
詳しくは次々回に見ていきますので、とりあえずは話の流れを掴んでおいてくださいね。

一応、今の所の目標は『〜その10』までに終わらすこと、であります…。



なお、今年の元旦に立てた目標は「鳥人戦隊ジェットマン」だったはずなのに、この時期になっても、まだ全然手がついていないとお嘆きの方は、ぜひこちらのあらすじ等からお読みください。








 第49話「マリア…その愛と死」

前話のラストで、ラディゲの策略で理性を失って人を襲う魔獣となっていくマリアを救おうとした竜。
だが逆にミイラ取りがミイラになってしまい、自分も理性を失い人間の血を求める魔獣とされてしまう。


基地に戻った竜はロボの整備中に香を襲いかかり、取り押さえられた挙句、檻の中へ。
血を求め禁断症状のように、のたうつ竜。
本人がその欲望に打ち勝たない限り打つ手がなく、立ち尽くすメンバー。
よりにもよってそんな時、モニターには街で無差別に人を襲うマリアの姿が…。





ここで凱が決断を下す。香の腕をつかみ
「竜を…頼むぞ」
大きく頷く香。


2人を残し、凱・雷太・アコはマリアの元へ走る。




1人残された香は、暴れのたうち回る竜をじっと直視し続ける。


突然、意を決したように檻の電子ロックを開錠、中へ入る香。
襲いかかる竜だったが欲望を乗り越えるよう、必死に語りかける香の叫びにようやく正気を取り戻す。



その頃、 凱たちは…。






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その正体を知っている3人は、暴れまわるマリアに手がつけられない。
そこに駆けつけた竜と香。
竜の捨て身の接吻により、ついにマリアはリエとしての意識を取り戻す。


何が起こったのか分からず、呆然と竜を見つめるリエ。
万感の想いで彼女を抱き寄せようとする竜。







しかし、そこへ現れたラディゲの襲撃によって2人は引き裂かれてしまう。

「マリア、お前は俺のもの。バイラムの幹部として生きるのだ」
「あ、あなたは…!!」


その姿、その言葉で、リエに全ての記憶が甦った。




「リエ!」
リエ「寄るなっ!!」

次の瞬間、リエは竜を拒絶。
立ち上がり、自らラディゲのそばによる。


リエ「竜、確かに昔、私はお前と愛し合った。
   だが今はバイラムの幹部…これからもずっと!!
リエでありながらも、その口調はマリアである。
「何言ってるんだよ、リエ?!」うろたえる竜。立ち尽くす4人。


「よく言ったマリア」勝ち誇るラディゲ







                 次の瞬間









ラディゲの油断を誘い、背後から一突きするリエ。
「せめて、せめて一太刀、お前に浴びせたかったっ! ラディゲっ!!」





「せめて」という部分が哀しい。
リエは初めから "自分の力ではラディゲを倒すことなどできない" ということが分かっているのだ。
それでも自分の人生をめちゃくちゃにした男に傷のひとつでも付けなければ、死んでも死にきれない。それに尽きるだろう。

直後、当然のごとく激怒したラディゲに切って落とされるリエ。
彼女にとっては、これも覚悟の上だ。


「マリア、お前は俺のもの。レッドホークには渡さん
傷を負いながらも最低限の目的は達し、高笑いしながら去っていくラディゲ。






駆け寄ろうとする竜だが…。
「竜、来ないで!!」刃先を竜に向けるリエ。


「これで…これでよかったのよ、竜。私の手は血で汚れてしまった
「昔には戻れない。あなたの腕に抱かれる資格は私には無い」

グレイの言った通り(前回参照)マリア=リエには確かに人間としての心が残っていた。
しかしだからこそ、いくら操られていたとはいえ、自分自身の行ってきた行為から眼を背けることなど、彼女には出来なかったのだ。




取り乱し、リエに駆け寄ろうとする竜。
そこへ彼女の気持ちを察したグレイが現れ、立ちふさがる。


「もう助からない。最後のお願いよ、竜…。忘れて…私のことを…」
「…やめろ…」
「あなたの胸から私の記憶を拭い去って…」
「やめろーー!!」

無我夢中で駆け寄る竜の目の前で2人の姿は消える。


           「リエーーーー!!」

結局、竜は "リエをバイラムから取り戻す" どころか、その亡骸を抱くことすらできなかった。





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離れた海辺でリエを抱きかかえるグレイ。
(波による光の乱反射と、首筋の返り血のコントラストが美しい)



リエ「ありがとう…グレイ」

自分の気持ちを汲んでくれたグレイに感謝するリエ。
リエに戻ってもグレイに対する信頼は変わらない。

グレイ「これでよかったのか?マリア」
リエ「本当は死にたくない…もう一度…もう一度…一から竜とやり直したい
  「…竜……りゅう………りゅぅ…

意識の薄れてゆくリエは、ただ竜の名前を呼び続ける。
自分の胸に抱かれながらも別の男の名を呼び続ける彼女を、ただ見つめるグレイ。
そしてリエは静かに息絶える。







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あまりのことに崩れ落ち、1人いつまでも泣き続ける竜。
一連の流れを背後から、ただぼう然と見つめる凱・香・雷太・アコ。


「見るんじゃねえ…そっとしておいてやれ」
竜を残し、去る4人。








絶叫する竜の脳裏に蘇る、在りし日のリエ。











               その姿が消え…。












            次回、第50話「それぞれの死闘」






2015年12月12日土曜日

[特撮-11] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その4


こちらのエントリーは連載となっています。
「鳥人戦隊ジェットマン」も分からないようでは、昇進に響くのではないか?と不安な方は、是非こちらのあらすじなどからお読みください。

 [特撮-08] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その1
 [特撮-09] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その2
 [特撮-10] 鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか? 〜その3

なお稀に、読んだことで 余計に昇進に響く 場合もございます。
ご了承ください。





さて、今回からいよいよ本題の『鳥人戦隊ジェットマンは本当に恋愛ドラマだったのか?』という部分に切り込んでいく。
これについては以前『結論から先に言うと、恋愛ドラマではなかったし、恋愛ドラマだった』と書いた。


というのは、このドラマでは 3つの恋愛模様が交錯している からなのだ。

1)凱 → 香 → 竜

これがメディアなどで取り上げられる『戦隊内部での恋愛』だ。
しかし「鳥人戦隊ジェットマン」では他に2つの流れがある。

2)竜 → ← リエ
3)バイラム側 / グレイ → マリア ← ラディゲ

この3つが並行して、またある時は 多重的に絡み合い、ドラマを紡いでゆくわけだ。








 マリア ← ラディゲ 



話がややこしくなるので先に一件、例外 を除去しておく。
3)において『マリア ← ラディゲ』と書いたが、実際にはこれは “執着” であって恋愛感情では無い。
ラディゲによる 一方的な所有欲・独占欲 である。



この番組のもう1人の主役と言っていいほどドラマに深く関わり、また時にはその中心に座ることすらあるラディゲであるが、その 鬼畜&ゲスっぷり は数多くのスーパー戦隊の敵の中でもひときわ輝く。
彼の前では「侍戦隊シンケンジャー (2009)」の敵「外道衆」の方々が紳士に見えるほどだ。



あえてここに組み込んだのは、この『マリア ← ラディゲ』という点に彼の屈折したキャラクターがよく表れていると思ったからだ。

まずそもそも論として、宇宙空間に放り出され死にそうになっていたリエを回収し洗脳して "バイラム幹部・マリアに仕立て上げたのはラディゲ である。
そういう意味では創造主なわけだ。

しかしマリア本人はそのことを知らず、普段はラディゲを嘲るような態度を面と向かってとっている。



 (自分の作戦を自画自賛するマリアに対し)
 ラディゲ「(嘲笑)」
 マリア「何が可笑しい!」
 ラディゲ「マリア、たとえお前が何をしようと、この私を超える事はできんのだ」
 マリア「黙れ!!そのうぬぼれがいつまで続くか見ているがいい」
 (第14話)


このラディゲの言葉の本当の意味をマリアは知らない。
つまりラディゲは自分の生み出したものが、自分の手のひらで踊らされているに過ぎないものが、それを知らず自分を蔑む様を見て、1人ほくそ笑んでいるのだ。




ド変態である。



もう一度言う。ド変態である。




それと同時にラディゲが固執しているのはあくまでマリアであってリエではない、というところもポイントである。
つまりラディゲが執着しているのは "所有物としてのマリア” なわけだ。

このラディゲのマリアへのちょっと理解しがたい執着は、物語の最終局面に大きく関わってくる。








 1)凱 → 香 → 竜 



さてド変態の世界にはさっさと別れを告げ、ノーマルな恋愛の世界を見ていこう。
まずは ジェットマン内部での恋愛模様。

この項と次の項に関しては既に何度か触れてきたので、その顛末に絞ってサラッと流す。



結成時のアクシデントにより民間人の寄せ集めになってしまったジェットマン。
その中にあって香は竜に惚れ込む。そしてそんな香に凱が惚れ込む

一方、竜は恋人リエを失うと同時に敵バイラムの襲撃に対し、唯一のプロとして先頭に立って立ち向かわなくてはならず、とても香と向き合うような余裕は無い。
しかしその、香と正面から向き合おうとしない竜の態度余計に凱をいらだたせ、その行動に雷太やアコまで巻き込まれ、とてもチームワークなど望むべくもない。



しかし第30話において 転機 が訪れる。

何度アタックをかけても取り付く島もない竜に対して、身を呈して(分かりやすい形で)自分を助けてくれる凱。
ついに 香は凱の気持ちに応え、2人は付き合うようになる。



(ここで一件落着といけばいいのだが、実際はジェットマンとしての活動がおろそかになるなど新たな火種に…)




ここから1クール程は良い雰囲気が続くのだが、だが所詮、御令嬢育ちの香とアウトローの凱では住む世界が違いすぎ、次第にギクシャクしはじめる。


ギクシャクしはじめた時期、基地に飛び込んできた凱と思わず目があった香の間に流れる微妙な空気はなかなか(嫌な意味で)リアルである。





 アコ「まあ、なんだね。あたしとしてはダメになると思ってたよ。だってさ凱と香じゃ育ちが違いすぎるもん。…竜の方が合ってたんじゃなあい?」
 香「ええ?そんなぁ…」
 (第44話)



結局これは、香の両親との会食の席において決定的 となる。



そして第45話。
アコ、雷太と共に敵に捕らえられ、凱と竜によって助け出された香。
その戦闘の終わった後の二人の会話。

 香 「凱、ごめんね。心配かけて」
 凱 「ああ、心配したさ。俺たちは仲間だ」

ここに 2人の関係はリセットされる こととなる。
そして同時に番組開始から続いた、香を中心とした戦隊内部の恋愛模様も、ここに ひとまずの終結を見る。


さて凱と香2人が一悶着起こしている その頃、竜は…。








 2)竜 → ← リエ 



前回触れたように敵・マリアの正体が恋人リエである事に気づいてしまい、ガタガタに崩れていく竜のメンタル。

リエは一旦正気を取り戻しても、再びラディゲによってマリアに戻されてしまう。
自分が何者なのか。自分に何が起こっているのか。全く分かっていない。
なので一旦マリアに戻ってしまえば、再び躊躇なくジェットマンに、竜に襲いかかってくる。

しかし竜の方はそうはいかない。
もはやマリアと戦うわけにはいかず、必死に呼びかけるその声は届かず、哀れな竜…。


完全に女王様状態のマリア



ここから竜の
リエをバイラムから取り戻すんだ → 無理でした → リエをバイラムから〜 → 無理でした
という 悲しい一人相撲 が続く。

結局は "リエの事は一旦置いておいて、とりあえずはバイラムを倒すことに集中しよう" という所に気持ちを落ち着けるのだが…。






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​さて、これまで軽くスルーしてきたが、本来かなり重要なのが敵・『次元戦団バイラム』である。
バイラム側のドラマ抜きでは「鳥人戦隊ジェットマン」は傑作たりえなかった。

特に中盤以降、それぞれがこう着状態に陥り停滞するジェットマン側に対し、ドラマティックな展開で、ストーリーを引っ張り始めるのはバイラム側である。

しかしメディアなどで取り上げられる際、残念ながらこぼれ落ちてしまうのもここである。



バイラム側の見所は数多くあるのだが、今回は恋愛に絞ったエントリーなので、『グレイ → マリア』を焦点を絞る。

上記2つが、分かり易い恋愛劇の形をとっているのに対し、グレイのマリアに対する感情は複雑だ。「鳥人戦隊ジェットマン」を恋愛ドラマとして見た場合、深みを与えているのがここの部分である。








 3)バイラム側 / グレイ → マリア 



バイラム幹部の1人、グレイ を紹介する。



以前、紹介したようにグレイはロボットである。

誰が、なんの目的で作ったのかなど、その由来は一切語られず、またグレイ自身がそれを知っているのかも触れられることはない。
ただ他の登場キャラクターのような『生き物』でない以上、彼の誕生には何らかの意思が介在していたはずであり、またその構造からして戦闘を目的としたロボットと思われる。

だとすれば、これまた以前述べたように番組開始時点で『組織としてのバイラム』はすでに終焉を迎えているので、全登場キャラクター中、唯一役目を終えた、レゾンデートルを失った存在であり『虚無』ともいえるだろう。



そのせいかバイラム幹部4人のうち、地球侵攻に対し一番冷めた態度で臨んでいる。

自分の立てた作戦がジェットマンに阻まれても「所詮、遊び」とうそぶき、それほど悔しがる様子も見せない。
番組序盤のグレイはクールというより冷めきった、まさにロボットである。
また基本的にいがみ合いのバイラムの中において、グレイだけは争いとは距離を置いている。




グレイの興味はロボットにもかかわらず 酒、タバコ、そして音楽。
こう書けば分かるように、彼は 凱と対を成すキャラクター である。

(凱もジェットマン5人の中で一人だけその出自や、親兄弟含め過去に因縁のあった人物が一切登場せず、過去が明かされない。
 なお、凱がジャズを好むのに対してグレイはクラシックを好む)

グレイと凱は次第に相手を意識し、ライバル関係になっていく。



それぞれの命運を賭けルーレットで勝負する、いかにも2人らしいエピソード。
第39話「廻せ命のルーレット」





だが第13話にて、マリアが演奏するピアノ曲を聴いた時から、グレイは別の顔を見せるようになる。


突然、吸い寄せられるようにピアノの前に座り演奏を始めるマリア。
この時、グレイだけでなくトラン、ラディゲまでもが無言でその様子を見つめるのが印象的だ。


しかしマリアは演奏を中断。
自分のとった行動、そしてなぜピアノを演奏できるのかわけが分からず困惑する。


この時マリアが弾いた、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情」は、その後も『グレイ&マリア』のシーンで使われるようになる。





この時点ではグレイが興味を示したのがマリアなのか、あるいはマリアのピアノ演奏になのかは分からない。

しかしここを起点としてグレイには、ジェットマンとの戦闘中マリアに力を貸す、さらには身を呈して守るような行動が目立ち始める。
その積み重ねから、マリアの方も "グレイは特別" という意識が芽生えていく。

この気持ち(?)の流れは1年を通しとても丁寧に描かれていて、視聴者も敵ながら感情移入してしまうだろう。

お互いをかばい合うグレイとマリア




だが、しかし。
この感情のやりとりは先に書いたような、他のキャラクターたちによる恋愛模様とは 決定的に違う。


グレイは自分がロボットであり『ロボットである自分にはマリアが本当に望むものを与えてやることは出来ない』ということを何度も思い知ることになるからだ。

先程書いた「マリアの方もグレイは特別という意識が芽生えていく」というのも、決してそれ以上ではない。
マリアから見れば、この感情は恋愛ではなく信頼関係なのだろう。


つまり、どう足掻こうが、グレイ → マリア という矢印に変化は訪れないのだ。
その全てを受け入れ、しかしそれでもグレイはマリアを見つめ続ける。




この『グレイ → マリア』は地味ながら非常に見応えがあり、また別のエントリーで触れる予定だ。
今回はあくまで番組全体の恋愛事情の1つとして、その顛末を見ていくことにする。




最終盤、マリアは功を焦るあまりラディゲにつけ込まれ、その操り人形となってしまう。
理性が薄れ、手当たり次第に人間を襲う魔獣となっていくマリア。
もはや自分の声はマリアに届かないと悟ったグレイは、敵であるはずの凱達の前に姿を現す。


そして…




 凱「グレイ!」
 グレイ「………マリアを…頼む」
 凱「何?!」
 グレイ「マリアはお前たちと同じ人間。傷つけてはならぬ」
 凱「何言ってやがるんだ。今のマリアは人間じゃねえ!」
 グレイ「私にはわかる。マリアには人間としての心が残っている。
     人間に戻れる可能性がある」
 凱「…グレイ、なぜだ。なぜ貴様がそんなことを…」
 グレイ「マリアを魔獣にしたくない。それならば人間に戻してやりたい」
 アコ・雷太「…」
 凱「覚えておくぜ…お前の言葉…」
 (第49話)




この “一歩" は果てしなく大きい一歩だ。

なぜなら、マリアが人間に戻るということは自分の手元から去ってしまうということだからだ。

竜が愛しているのはリエである。マリアでは無い。
同じくラディゲが執着しているのはマリアである。リエでは無い。
グレイだけがその境界線を超え、彼女の存在、その全てをありのままに愛する境地に至ったのだ。

しかしその想いをマリア(リエ)が知る事は無い。
果たして彼女を中心としたドラマの行く先は…。






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この番組における恋愛要素が多重構造になっているのがお分かりいただけただろうか。

次回はマリア=リエ編の最終章とも言える・第49話「マリア…その愛と死」


そして一見宙ぶらりんになってしまったかに見える香達のドラマの帰結点・第50話「それぞれの死闘」を通して、この番組におけるそれぞれの恋愛要素の意味の違いを見ていく。


んじゃ、また。







2015年12月5日土曜日

機材紹介 /​「M-GS64」〜 緊急指令・予防線を(自己責任で)突破せよ!


さて今回は前回掲載したdemo曲「慟哭」にて、大活躍した機材を紹介する…


…んですが、最初にお断りしておきます。
この機種、別に名器でもなんでもありません!
いや、名器どころかむしろ…。

というわけで『お、コレこないだミツカワが言ってたやつじゃん!クソ安いし、いっちょ買ってみるか』なんて事をされても当方は一切責任持てませんので自己責任でお願いいたします。


まあつまり、こうやって 予防線を張りまくる程度の機材 ってことですよ。



今曲、前曲と "スケッチしておいた曲" という言葉が出てきましたが、自分の場合『スケッチ』とはデモですらなく、とりあえず自分が分かればいいというものです。
そのためクリックもテンポも一切設定せず、シーケンサーをいわばテープレコーダー扱いでピアノなりシンセの音でコードとメロディーを入れておきます。
(ただしパーツ集ではなく、最低限1コーラスは曲として完成しているものです)

後はその上に重ね録りで、その時頭の中で同時に鳴っている音を一緒に入れておきます。
あくまで自分が後から聴いて "どんな景色をイメージして作った曲なのか" が分かればいいという程度です。






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というわけで今回の主役の登場です。

とにかく “スケッチ” なんで時間をかけずにバーっと記録してしまいたい、ということで90年代中頃から割と最近まで、ほとんどこれ1台+αでスケッチしていました。

それが Roland「M-GS64」という1Uラックの音源モジュール です。






もう一度強調しておきますが、名器でもなんでもないですからね!(2本目の予防線)
今、この名前を聞いてピンとこなかった人 + あー、そういえばそんなのあったような気がするなぁと思った人 = 世間の95%だと思います。

お値段も発売当時で6万5千円(税別)
まあ、はっきり言って アマチュアが最初に買う機材 といったレベルです。



ただ今となっては伝わりにくいでしょうが、当時この値段で
『最大同時発音数64­ 音色数654­ ドラムセット24­ パート数32』
というのは、ものすごくコストパフォーマンスに長けていました。
そのうえ、ステレオアウトも 無駄に2系統装備 していたりして、いったいどのレベルのユーザー層を狙っているのかよく分からない機材でもありました。


wikipedia ではこう紹介されてます。

「M-GS64」 
 SC-88相当の1Uラック版。SC-88より音が良いとされ流通量が極めて少ないため中古市場でもあまり見かけることはない。

ここにも書かれている通り、当時一世を風靡していた Sound Canvas シリーズ「SC-88」の1Uラックバーションなんて紹介もされましたが、「M-GS64」は電源を内蔵しており、音質も自分の印象では「SC-88」より落ち着いた感じでした。

なお下線部分を読むと名器っぽくも思えますが…騙されるな!
これは単に大して売れなかっただけだと思われます。






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ただ、写真を見ると貧弱なインターフェイスに見えますが、自分でシステム・エクスクルーシブ・メッセージを作成して送信すれば、ありとあらゆるパラメーターを操ることが出来(注)自由度は非常に高い です。

 (注)例えばドラムキットの中で、スネアだけピッチを変える・ポルタメントタイムを変更するなど。

なお、この "システム・エクスクルーシブ・メッセージ" の作成には16進数による計算が必要で、ミツカワは90年代後半こればっかりやっていたせいで、通常の10進数の計算が苦手になってしまいました。本気で生活に支障をきたすレベルです。 ←



  これがシステム・エクスクルーシブ・メッセージだ!


コントロールしたいパラメーターごとに赤線部分のようなデータを1行ずつ作って送信する。
ミツカワの青春はシステム・エクスクルーシブ・メッセージと共にあった と言っていいだろう。それが青春ってどうなんだ?とかは考えない。





閑話休題





というわけで自分が "スケッチ集" と称しているデモテープ群を再生すると、ほぼ全てこの「M-GS64」+「JV-2080」(こちらは名器です)で書いた音が流れてきます。

ここから本題なんですけど、15年ほど前にPCに制作環境を移行させようと思ってかなりの機材(JD-800 とかね)を売り払ったんですが「JV-2080」はともかく、この「M-GS64」もいまだに手放せないんですよ。

その理由を 今回の「慟哭」を作っていて思い出したんです。






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三たび強調しときますけど名器でもなんでもないので、はっきり言って 音はしょぼいです。(3本目の予防線)
音色だけでなくリバーブもなんかザラついた感じがするし、インサーション・エフェクトなんてシャレオツなモノも付いてないので、ディストーションギターの音などは聴けたもんじゃないです。



なんですけれども、この独特のくすんだ感じがたまたまこの「慟哭」という曲にマッチしてるような気がし、今回の発表にあたって一旦は良さげなソフトシンセに差し替えたりしたんですが、結局は「M-GS64」の音&リバーブをそのまま使いました。


ですので、この音源で聴ける音の50%以上は「M-GS64」のままです。


ショボい音でも曲の持っている世界観とマッチしてしまったら、どんな高級機材と差し替えても違っちゃうんですよね。

とはいえアウトプットなんかも、やはり それなりのものでしかない ので小さい音だとノイズが聴こえてきますし、リバーブを深くかけるとリバーブの消え際にノイズが聴こえたりとかしてしまうので、来年本格的にレコーディングし直すときにはどうしたもんか…というのが悩み所であります。





さてここまでは音質の話でしたが、もう一つマッチングしてしまったものがあります。
それは 演算能力の足りなさ です。

といっても『は?』という感じでしょうが、それはこういうことです。





中盤に入ってくるシンセソロ。
この最後でポルタメントをかけて音を急激に上昇下降させています(3:07〜08)



これは当然そのようなデータをシーケンサーから送って「M-GS64」を鳴らしているわけですが、よく聴くと「M-GS64」が非力な為 このデータに追従しきれず、曲線が階段状になってしまっているのです。


図で書くとこんな感じ。


本来これは良くないことなんですけれども、この曲に限って言えば、なんだか 「M-GS64」 が悲鳴をあげているように聴こえる んですよ。
それが曲の雰囲気と凄くマッチしてる感じがして、これまたいろんなシンセに差し替えたんですが、結局「M-GS64」に勝るものがなく、そのまま採用したというわけです。
ある意味、テクノでしょ。






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というわけで購入以来20年近く現役であり続けた「M-GS64」ですが、ついに、ついにそのライバルが!
この冬、早ければ年内にも Roland から同種の波形を搭載したソフトシンセ「SOUND Canvas VA」を発売 とのアナウンス!




まあ「M-GS64」の音質は、アウトプット端子などのアナログパーツによるところも大きいでしょうから、完全な代わりにはならないと思いますが、それでも全音色が配列も含め自分の頭に入っているというのは大きいです。
スケッチ用途としては最適かも、と期待に胸を膨らませています!





さて次回は、いよいよその恋愛事情の実態に迫る!
ジェットマン・エントリーも本番です!!

んじゃ、また。